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Redmine から始める現場・企業文化改革 part.4

Redmine Advent Calendar jp 2011 Changeworld on Redmine 25日目の参加記事です。

Redmine から始める現場・企業文化改革の4つ目の事例を最後にご紹介します。

準備するものは、Redmine, Redmine(≒ITS(Issue Tracking System))に賛成ではない企業 になります。

何か新しいものを採用する際、採用しようとする側がどうしてそれを採用すると良いのか説明する義務があります。この説明に必要なエネルギーの量は企業の規模の二乗に比例します*1

このエネルギーを惜しんで大抵の人は自分さえ、もしくは自分の現場さえ採用出来れば良いという行動をしがちですが、その行く末はあまり良いものではありません。

理由として、自分さえ、もしくは自分の現場さえという思想は部分最適です。部分最適では残念ながら全体としての力は向上しません。例えば、ここに一本の鎖があります。この鎖の強さ、すなわち強度は一体何によって決まるのでしょうか? 言うまでもありませんね、それは鎖を構成する輪の中で一番弱い部分の強度によって決まります。強く引っ張られた鎖は、強度が一番弱い部分で断ち切れます。これは、他の部分がどれだけ強い輪で構成されていても同じです。輪の一番弱い部分を補強しない限り、鎖全体の強度を向上することはできません(鎖の例であまり分らなかったら、切れ込みを入れた紙と、入れていない紙を引っ張った際にどこで紙が切れるか実践してみると良いでしょう)。これと同じことが部分最適でも起こります。

というわけで、全体としてよくする場合、最終的には企業文化を改革する必要があります。手始めとして、自分、自分の現場でまず実践するのは良いと思います。

さて、ここまでは前置きとして、では社内に Redmine を適用する段で最も良く聞かれるのは「Redmine を採用するとどういう効果がある?」です。定性的効果で納得してくれる人もいますが、大抵の人は定量的効果を求めてきます。

定性的効果については、皆さんが思ったことを正直に伝えるのが良いと思います。逆に定量的効果は論理的に導き出す必要があります。

定量的効果として最も求められる要素は生産性です。これは Excel のWBS(Work Breakdown Structure)を使った場合と Redmine を使った場合でどれだけ生産していない時間が減るかを単純に足し合わせた数字を伝えると良いでしょう。「開発リズムがあがる」「モチベーションがあがる」といった計測出来ない要素は外してください。私は1日に Excel のWBSの更新にかかる時間を全ての拠点で調査して、その平均時間×人数とRedmine のチケットの更新にかかる時間を何人かに試してもらって、それの最大と最小を捨てた数字の平均時間×人数を求めて、「○○日以上の開発を行う場合は、Redmine を導入にかかる時間も十分ペイ出来ます」といったことを伝えました。

次に求められるのは管理側のデメリットです。それへの対応については一昨日Redmine から始める現場・企業文化改革 part.3で書きました。

相手が求めるものにだけただ対応していては、中々採用してもらえません。こちらから逆提案するのも良いです。経験則ですが、 Excel のWBSの場合、前半で追加した作業は基本的に作業の粒度が整えられているのですが、後半に急に追加された作業(=当初想定していなかった作業)の粒度はかなり荒くなります。後半に追加された作業に限定されませんが、後からExcel のWBSに行を追加したりした場合、大幅に他の機能(大抵の場合、右側に日付毎にセル表示されていて、日付と色に紐付いたで消化具合を表す)の部分までメンテナンスするのが厳しいからです。こちらに関して、Redmine では自動的にチケットの状況を表示してくれるので、後からチケットを追加してもメンテナンスするのが厳しいということがあまりありません。

導入してきた経験からはRedmine の機能は管理側には押し付けず、管理側に関しての作業は従来のやり方からあまり変えない方が受け入れられ易いです。そして、「Redmine だとこういったことも出来ますよ」と言ってロードマップやスケジュールの画面を見せれば、普通の管理職なら言われなくても自分でロードマップやスケジュールを見て把握してくれます。

最後に気をつけてもらいたいのは、Redmineは所詮ツールであるということです。ツールを入れることが大事なのではなく、プロセスやマインドを変えることの方が何倍も大事です。Redmine を導入して、「ちょっと…」と使っている開発者側から言われた場合は強引に導入するのではなく、まずはカンバンやToDoボードと付箋紙を使って、チケットの扱いに慣れてもらうのも良いと思います。カンバンやToDoボードと付箋紙でWBSよりもチケットを使った方が開発し易いと感じてもらえれば、「ちょっと…」と思っていた開発者も自分で使い方を調べてくれたりします。付箋紙からの集計を行う必要があるので、管理側に報告するまたは管理側の人にはキツイかもしれませんが、うまく導入出来ればその投資(付箋紙に書かれている内容の集計作業)は何倍、十何倍にもなって帰ってきます。ローリスクハイリターンなことは世の中ではそうありませんから試してみる価値は十分にあると思います。

Redmine(≒ITS(Issue Tracking System))をただのITSというツールの一種としてだけ見るのではなく、Redmine を使ってどういう風に現場・企業文化を良くしていけるか?と考えることで、ここには書いていない様々なメリットを享受出来ることでしょう。その際はblogやWebサイト等に書いてトラックバックをもらえると嬉しいです。